都会から脱出して、早く農業してみたい!
毎日自分が作ったものを食べたい!
余った分を誰かにわけたり農家レストランやカフェをしたい!
じゃあ、まずはどこか農地を買おう!
不動産サイトチェック カチッ
って、ちょっと待った〜!
これ、完全にNGパターンです。
なぜならば
1.農地の取得要件が厳しい&費用が高すぎる
2.獣害・土地条件・人間関係を見極める必要がある
3.土地に責任が持てなくなっても費用が発生し続ける可能性がある
僕は人口1万人の町に移住して農業(食う分の畑と田んぼ4反弱)をはじめて、15年経ちます。
初めの頃は田舎(特に中山間地と言われる山あいの地域)の農地の事情について全くわかりませんでした。
しかし何年か経つと、近所の人でも手を出さない農地がたくさんあることに気がつきました。
今回は田舎の農業の現場にいないとわからない、農地は買わずにまず借りるべき理由3選について解説します。
1.農地を相場価格で手に入れる方法
2.誰も手を出さない農地を見極めるポイント3選
3.耕作放棄すると農地もあなたも不幸になる理由
農地の取得要件が厳しい&費用が高すぎる!
農業委員会の農地の取得要件は厳しい
実は農地は誰でも買えません。
各市町村の農業委員会で許可がおりた人しか買うことができません。
許可のためには、各市町村で定められた農地の取得要件を満たす必要があります。
その中に、申請者の農地の最低耕作面積が決められています。
農業委員会で定められている売買時の最低耕作面積
都府県では50a以上
北海道では2ha以上
(但し詳細は各市町村により異なる)
*現在は過疎化による耕作放棄地などが問題になっていることから、下限面積を50a以下に定めている市町村が多い。
*最近だと空き家バンク附属の農地に限り、0.1aから取得可能と定めている地域が出てきている。
じゃあ50a以上まとめて買えばいいのね。
本当に50aの広さのイメージが持ててる!?
50aの広さというと
テニスコート約20面
サッカーコートの約4分の3 だよ。
広くない!?
そもそも50aの広さで何を作りますか?
私の住んでいる地域は寒冷地で火山灰土ですが、「畑は1反もあれば一家4人食べていくのに十分な面積だ。」と言われています。
5反と言ったらその5倍。
私の経験だと中山間地の平坦でないところの草刈りは、1反あたり1.5時間~2時間かかります(条件の良いところを除く)。
→5反で約8時間/月
これ、初心者や兼業サラリーマンには結構キツイですよ。
農地を借りるのにも農業委員会を通す必要がありますが、最低耕作面積の要件などは特にないことから、自分のできる範囲から始めることができます!
自給自足に始めるための農地の広さについて知りたい方は、過去記事をどうぞ!↓↓
農地は不動産サイトで買わずに口コミで買うべき理由
不動産サイトに出ている農地は、地元の人が手を出すことはまずありません。
なぜなら値段が相場よりも数倍高いからです。
不動産サイトで僕の住んでいる町の農地の値段を調べたら、相場の10倍程度の値段がついているところがあったよ。
道路沿いで宅地にもなるところでは、一般的に通常の農地価格より高くなります(宅地転用できる場合に限る)。
それでも不動産サイトに出ている価格は2倍以上、という実感です。
都会の人からしたらそれでも安いのかもしれないけど、ある意味ボッタクリよね…
通常条件の良い農地売買であれば、まず口コミの段階で直接売り手が決まります。
そしてその時は相場価格で取引されることが多いです。
不動産サイトに出ている農地は、口コミの段階でも売り手が見つからず、誰も手を出さない理由がある、と考えたほうが無難です。
口コミを集めるためにも、まずは農地は買わずに借りることをオススメします。
農地の賃借料は、「市町村名」「農業委員会」「賃借料」で検索すると、各市町村の農業委委員会が公表している平均賃借料を閲覧することができます。
僕の住んでいる町(中山間地域)で土地を借りた場合は
田んぼであれば1反で玄米2俵程度/年(13,000円くらい)
畑でも1反で10,000円程度/年
借り賃がとても安く、ノーリスクで始められるんだね!
農地を借りれば、リスクを最小限に抑えて、低コストで農業を始めることができます!
では次に誰も手を出さない農地がある具体的な理由について解説します。
獣害、土地条件、人間関係を見極める必要がある
誰も手を出さない農地がある理由としては獣害、土地条件、人間関係の3点が挙げられます。
順に解説していきます。
獣害を見極めろ!
中山間地では、獣害の被害が深刻です。
特に猪や鹿が増えており、収穫直前に田畑を荒らすこともしばしば。
猪は一度入られると匂いがつき、商品にならないだけでなく自家用としても食べれないこともしばしば。
またユンボで掘ったように土をほじくり返したり、畦や斜面を崩すことがよくあります。
大型機械を持っていない人にとって、跡の整地が本当に大変です。
現在獣害対策として、補助金を活用して金網や電気柵を張ってあるところがたくさんあります。
金網や電気柵が張ってあるからといって、安心するのはまだ早いです。
電気柵なんて無視して飛び込みますし、金網なんてあっという間に持ち上げてグチャグチャにされてしまいます。
地元の人たちでも、獣害がひどいところは農地が広くても放棄しようかと悩んでいるところがあります。
獣害の状況は、数回の農地の様子を見に行くだけではわかりません。
一番信頼できるのは、地元の人たちの口コミ情報です!
口コミ情報を得るには、そう。農地を借りて作ることでしたね!
土地条件を見極めろ!
田んぼなら水利条件を見極めろ
特に田んぼの場合、水利が良いところかどうかが重要です。
なぜならば、毎日水を見に行く必要があるからです。
水利が悪いところだと川からの取水口が1km以上離れていて、取り口がいつも詰まるなんてことも。
車が行くところならばまだしも、中山間地では徒歩で行かなくてはならないこともしばしば。
毎日のことなので、大きな負担になります。
また水路沿いの草切りも毎月必要となり、大変です。
中でも無農薬で田んぼを作りたいと考えている人にとっては、水利は命です。
なぜならば田んぼの水の量が安定せずに、一時的にでも減ると草が一斉に芽を出して草だらけになるからです。
私の家では無農薬で田んぼを作っているわ。
同じ水路で田んぼを作っている人たちは、梅雨時期になるとみんな除草剤を入れるの。
その時に水の取水元を止めてしまうことがあるのよ。(水を溜めておいた状態で除草剤をふり、水を当てずにそのままの状態を保つとよく効く除草剤を使用しているため)。
だからせっかく手で草をとった後も水の量が減り、1週間後には田んぼ一面草だらけという経験が何回もあるよ。
土質と作り方の課題を見極めろ
日本は火山列島のため、火山灰土(黒ぼく土)が広く堆積しているところがたくさんあります。
しかし火山灰土(黒ぼく土)は基本的に農業には向いていないと言われています。
土質が酸性だからです。
しかし酸性を好む作物もいます。
(ジャガイモ・サトイモ・トウモロコシ・ブルーベリーなど)
田んぼを作る時に、黒ぼく土はトラクターなどの機械が入るたびに深くなり、大変作りにくいです。
(私のトラクターは自給用の小さい14馬力くらいのものなので、はまることもしばしば)
畑も一度雨が降ると水はけが悪く、しばらく耕せないことも。
半径1km以内の同じエリアでも、山側エリアは黒ぼく土、川沿いは砂土または砂利土だったり様々です。
現地を一度見るだけでは、土質や作り方の課題はなかなか分かりません。
実際に当地の農地を借りて作ってみることで、その土地に土質や作り方の課題が見えてきます!
農地に行くまでの道を見極めろ
農地そのものは立派でも、農地に行くまでに公道でなく私道を利用することがあります。
私道がガタガタで悪かったり、幅がとても狭かったり、距離が長い場合はよく考えましょう。
私道の幅が狭い場合、トラクターなどの機械が入らない場合があります。
川沿いなどでは通行中の事故の可能性も高くなります。
私道の距離が長い場合は私道の草刈りが大きな負担になります。
下手したら農地の周りを切るよりも、道の草切りの面積のほうが広いなんてこともザラにあります。
また道が土砂で埋まったり、木が倒れてきたりした時も、私道であれば自分でなんとかしなければなりません。
僕も前借りていた農地は、農地の周りを切るよりも私道や水路の草切りの面積の方が広かった…
草切りばかりで身体がもたなくなって、その土地は3年の賃貸借契約終了後にお返ししたよ。
田舎でも公道沿いの農地が人気が高いのは、私道の維持管理の手間が大きいからなんですね。
農地を借りてワンシーズン通して作ってみることで、農地の道事情についても詳しくなります!
人間関係を見極めろ!
農地なのに人間関係、
そんなのある!?と思ったあなた。
残念ながらあります。
特に農地が隣接していたり、田んぼなら水路が共有の場合、農地に行くための私道が共有の場合は注意が必要です。
農業を取り組んでいる人たちの考え方は様々です。
・「しっかりと農薬をふって、市場で高く売れる見た目が良いものを作りたい。」
・「あぜや周りの草が伸びているとみっともないので、いつもキレイな状態に保ちたい。」
・「無農薬で安心、安全なものを作りたい。」
各人の思いが異なる場合トラブルに発展することがあります。
例えば私の地域で実際にあったのは……
・同じ水路で上の田んぼの人の切った草が下にある私の田んぼに流れてきた。
「水の取り口が草で詰まるのが許せない!草切りの時に水路に草を落とすな!」
・隣の田畑が荒れ果てて、害虫の巣窟になっている。「今すぐ草を切ってくれ!」
・私の家の前の私道を通っていく時に、トラクターについた土が落ちる。「毎回泥をとって掃除しろ!」
など。
トラブルに発展すると、
毎日のように「なんとかしろ」と言われる事態になります。
せっかく田舎で自然に囲まれてのんびりと農業をしたいのに、こんなことになったのでは元も子もありません。
そのためには人間関係をきちんと見定める必要があります。
農地を選ぶ条件は場所や広さや作業のかかりやすさだけではなく、人間関係も重要な構成要素です。
土地条件がいいのに近所の人が誰も手を出さない農地には、人間関係の問題が含まれていることがあります。
人間関係まで深いところを見極めるためには、まずは農地を借りて作ってみることですね!
土地に責任が持てなくなっても費用が発生し続ける可能性がある
農地を買ったはいいけど、条件に合わなかったという時には、耕作放棄して売ってしまえばいい、と考えている方がいるかもしれません。
都会だったらそのままにして空き地にすればいいのかもしれません。
しかし田舎では
水路が共有であったり、農地までの道が私道でかつ共有であることが多いです。
場合によっては土地改良区という組織を作って、共有で用水路の管理や道の管理を行なっていることもあります。
この場合毎年会費を納めるだけでなく、年に数回草刈りなどの維持管理作業を共同で行います。
もし作業に出ることができない場合、科料(出不足金)を取られることがあります。
僕の地域なら科料は1日仕事なら8,000円、半日程度なら4,000円程度かな。
規約で会費や科料などを納めないと、組合から退会させられたり、差し押さえられたりすることもあるようです。
もしそんなことになれば、今度は農地の買い手が見つかりません。
また、耕作放棄するとあっという間に一面にススキやセイタカアワダチソウが繁り、誰も入れない状態になります。
その後低木が生い茂り、猪の巣窟となって、元の農地の状態に戻すことが大変難しくなります。
そうすると最終的に誰も手を出さない、処分できない負の財産になります。
この場合、固定資産税を永遠にあなたが払い続けることになります。
僕も3年間耕作放棄された田んぼを借りて作ったことがあるよ。
畔がなくなっていたり、周辺が灌木で生い茂っていたりと、田んぼ作りにかかるまでがとても大変だった…
たった3年なのに、こんなに荒れてしまうものかと思ったよ。
まとめ
農地はまずは買わずに借りましょう。
低コスト、ノーリスクで取り組むことができます。
そして借りて作ることで、不動産価格の実態、獣害・土地条件・人間関係などをしっかりと見極められるようになります。
もし自分が望む農地の条件に合わなかった場合は、持ち主に返せばいいのです。
買った後に耕作放棄してしまうと費用面でも農地維持の責任だけ残り、最終的に誰も手を出さない、負の遺産になってしまいます。
一方で気に入った農地を見つけた場合は、近所の人の口コミで売買の話が出た段階で購入しましょう。
そうすると不動産サイトに出ている価格ではなく、地域の相場価格で手に入れることができる可能性が高くなります。
要するに長い目で農地の取得を考えたほうが、最終的にいい農地との出会いが生まれる、ということです!
私も最初農地を借りて作るって、「なんだかな〜っ」て思ってたのよ。でも実際やってみると、低コスト&ノーリスクで農業に取り組めることがわかったよ!
自給的な農業を始めたいと思っている人は、まずは農地を借りて作ってみることだね!
作ってみてわかることがたくさんあるよ。
みなさんもいい農地との出会いがありますように!