「田舎に移住するならば、自然豊かなところで自然を相手にする仕事をしたい!」そう考えている方は多くいらっしゃると思います。
でも、自分には自然に関する知識も経験もないからなぁ。自然系のお仕事って、大学や専門学校を出て専門性がないとできないんじゃない…?
確かに自然系の仕事は専門性が高いイメージがあるけど、一般的な社会人としてのスキル(挨拶・言葉遣い・時間厳守・報告/連絡/相談などの手順)や基本的なPCスキル(Word、Excel、PowerPoint)、コミュニケーション能力があれば、誰でも挑戦することができる仕事があるよ。
今回は未経験の方でも始めることができる、自然系のお仕事「アクティブレンジャー」を紹介します。
1.アクティブレンジャーとは何か
2.アクティブレンジャーとして働くメリット3選
3.アクティブレンジャーの収入
4.アクティブレンジャーの応募3ステップ
5.アクティブレンジャーの仕事の注意点
アクティブレンジャーとは
「アクティブレンジャー」とは、環境省が日本全国にある国立公園の管理を充実させるために、各地の国立公園に配置している非常勤の国家公務員です。別名を「自然保護管補佐」ともいいます。その仕事内容は、配属先の国立公園によっても異なりますが、大まかに国立公園のパトロール(巡視)や利用者指導、自然ふれあい行事の実施、自然環境の調査、ボランティアコーディネート、自然解説など多岐にわたります。任期は1年ごとの契約更新で最長3年ですが、再度応募することも可能で、実際に同じ国立公園で数期にわたりアクティブレンジャーとして働いている人もいます。
非常勤の国家公務員ってことは、公務員試験を受けなければならないってこと?ハードルが高すぎるわ。
非常勤の国家公務員だから、国家公務員採用試験を受験する必要はないよ。その代わり各地方環境事務所のアクティブレンジャー採用試験を受験する必要があるよ。これについては「4.アクティブレンジャーになるには」で、しっかり詳しく解説するから、心配しないでついてきてね!
アクティブレンジャーとして働くメリット・デメリット
メリット
①日本を代表する大自然の中で働き、暮らすことができる
アクティブレンジャーは北は北海道から南は沖縄まで、日本全国34の国立公園地域で募集があります(2022年9月現在)。小笠原などの離島での募集もあり、日本を代表する大自然の中で働き暮らすことができます。募集は各国立公園エリアごとに行われるので、移住したい先や暮らしてみたいエリアでの募集があれば、挑戦する価値があります。自然が大好きな人にとっては、毎日大好きな山や海岸を眺め歩き、大好きな自然を守る仕事につくことができるので、魅力的な仕事の一つです。
②自然系の仕事のスキルを身につけることができる
アクティブレンジャーの仕事内容は各地域で異なりますが、どの任地であっても「自然」が相手となることから、基礎となる自然系の仕事のスキルである行事の企画方法や自然のリスク管理、そのエリアのフィールドに関する幅広い知識、インタープリテーション(自然解説)技術など、ひととおり身につけることができます。今後移住先でエコツアーガイドや自然学校、森の幼稚園をはじめとする体験活動、グリーンツーリズムなどを実践してみたいと考えている方には、特におススメです。よく巷で開催されている高額の●●養成講座などを受講せずとも、仕事の中で自然系スキルを身につけることができるのが魅力です。
③国立公園地域での人とのつながりができる
日本の国立公園は山岳地帯、海岸や海域、離島地域などが指定されており、人口の少ない地方エリア(いわゆる田舎)に存在します。よってアクティブレンジャーの仕事をする中で、公園内で観光事業や宿泊事業を営んでいる方々や、公園内に住む地域住民との深いつながりを得ることができます。任期後はそういったつながりの中から新たな仕事を見つける人がたくさんいます。また次の仕事につなげられるだけでなく、任期中に拠点となる住居を見つけて、本格的な田舎暮らしをはじめることができるのが魅力です。
実は私もアクティブレンジャー卒業生で、今も同じエリアで国立公園の関係の仕事についているよ。私の周りのアクティブレンジャー卒業生は、地元の自然学校に就職したり、地域のプロのエコツアーガイド団体に所属したり、公園管理会社に就職したりと、卒業後もそのエリアで自然系職業についている人がたくさんいます!
デメリット
①任期がある
アクティブレンジャーは非常勤の国家公務員であることから、任期は1年の任期が連続2回まで更新される最長3年(但し前年度勤務実績が優良の場合、任期後の再度の応募は可能)と制限があります。自然を守る仕事なのでやりがいがありますが、任期後の人生設計が必要となります。目指すべき姿が最初にあって、そのためにアクティブレンジャーになるという選択をおススメします。
②就業エリアが限定される
アクティブレンジャーは各国立公園エリアでの募集となるため、当然のことながら就業先は採用された国立公園エリアに限定されます。よって国立公園エリア以外での移住を考えている方にはおススメできません。逆に「国立公園のあるエリアへ移住したい」「移住先はまだ決めていないけど、とにかく地方や田舎で働いてみたい」「自然が好きで自然系の仕事をしてみたい」という方にはおススメの仕事です。
アクティブレンジャーの収入と待遇
アクティブレンジャーの収入は任地や条件によってさまざまです。令和4年度採用のとあるエリアのアクティブレンジャー求人情報を見ると、大学新卒者8,680円~10,300円/日(経験年数による加算あり)で給与目安(月額)182,280円となっています。賞与(勤勉手当)は人事院勧告によって年によって上下ありますが、年額概ね4ヶ月程度(令和4年度4.4ヶ月分)は支給されています。
よって年収は大卒者で約300万円程度~となります。
地方エリア(田舎)は都市部と比較して相対的に年収が低くなる傾向があるけど、田舎の仕事の平均年収と比較したときには決して悪くない給与額と思うよ!田舎暮らしの第一歩としては使える制度だよ。
社会保険は基本的には厚生保険・健康保険に加入しますが、18日以上勤務した月が連続して12ヶ月を超えた場合であって、引き続き同一任命権者の下で勤務する場合は、国家公務員共済組合に加入するようです(法律が改正されると異なることがあるので、募集要項をきちんとチェックしましょう)。
その他規程により通勤手当、扶養手当、住居手当、超過勤務手当、期末・勤勉手当(前述済み)、出張旅費を支給があるようです。
アクティブレンジャーの応募から採用まで
①アクティブレンジャーの求人情報をチェックする
アクティブレンジャーは前述の通り、非常勤の国家公務員ですが、国家公務員採用試験を受験する必要はなく、環境省の各地方環境事務所のアクティブレンジャー採用試験を受験することになります。各地方環境事務所は全国7ブロックごとに存在しており(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国四国・九州全国 *福島地方環境事務所は除染に特化)、地方環境事務所に所属する各国立公園の管轄事務所ごとにアクティブレンジャーの募集があります。(例:九州地方環境事務所のホームページで、阿蘇エリアを管轄する現地事務所のアクティブレンジャーの募集がある、というイメージ)
募集は毎年12月~2月頃に行われています(欠員が出たときには随時募集あり)。
自分の希望するエリアでのアクティブレンジャーの募集があるか、チェックしてみましょう。いざ募集が出ると応募期間が1ヶ月ないことがありますので、事前に過去の募集要項などを確認しておきましょう。
また勤務条件(必要なスキル)や業務内容もきちんと見ておきましょう。どの募集要項でも、基本的なPCスキル(Word・Excel・PowerPoint)や普通自動車第一種運転免許は必須スキルとなっています。
②応募
過去の募集要項ではどの地域においても、1⃣小論文(1200字以内)と2⃣履歴書の提出が求められています。小論文のタイトルは、募集年度や地域によって異なりますが、「アクティブレンジャーとして取り組みたいこと」を大きなテーマとして求められることが多いようです。事前に希望する任地の自然環境を調べたり、自身の経験を活かせることがないか考えておきましょう。他の応募者もアクティブレンジャーに初めて応募することは変わりません(再度受験を除く)。特に自身に専門知識などがない場合は、事前のリサーチ力がものを言います。おススメは働いてみたい現地にあるビジターセンターに行って情報収集することです。各国立公園には「ビジターセンター」といって、その国立公園の自然や歴史を紹介している博物展示施設があります。展示を見たり、ビジターセンターで働いている人に現地の自然保護の課題などを聞くと、自分が具体的に取り組めそうな課題が明らかになるはずです。
③採用試験
採用試験は学科試験などはなく、1⃣書類選考試験(②で提出した履歴書・小論文)の後に、2⃣面接試験が行われます。面接試験は他の会社の面接試験と変わりなく、聞かれそうな内容(動機、自分の長所短所、得意なこと、社会経験、アクティブレンジャーとして取り組みたいことなど、任期後の人生設計など)をしっかり準備しておけば対応できます。
アクティブレンジャーの仕事の注意点
公務員としての倫理規定、守秘義務が適用される
アクティブレンジャーは非常勤とはいえ国家公務員の身分になります。国家公務員法に基づき、公務員の倫理規定や守秘義務が適用されます。国家公務員倫理規程では、利害関係者から金品・物品贈与・接待を受けることなどは禁止されています。また守秘義務があり、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならないと定められています。
兼業については、国家公務員法国家公務員法第104条で、正規の国家公務員の兼業は「内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する」と制限されていますが、非常勤職員は「職員の兼業の許可に関する政令」(昭和41年)の第3条で、その条文の適用が除外されています。但し利害関係者となる機関での就業ができないことがありますので、副業をしたい人は事前に問い合わせておきましょう。
任務先によっては体力が必要
特に山岳地域のアクティブレンジャーの募集要項では、山岳地域のパトロールが業務に入っているため、当該エリアの山を歩けるだけの体力が必要となります。特に富士山を含む中部山岳エリアなどでは、(往復8時間以上かかるような)山岳登山及び山中泊を伴う単独登山が可能なことなどが応募要件として入っています。その他の山岳エリアでも、往復4時間程度の登山が可能な体力などは求められることは多いです(エリアによって異なる)。事前に募集要項をしっかりと読み込んで、自身の体力で対応可能なエリアかどうか判断しましょう。またフィールド調査や自然体験活動など、野外での活動が求められることが多いので、基礎体力は必要です。
任期後の保障はない
アクティブレンジャーの任期は最長で3年のため、任期後の保障はありません。任期中は、わりと新しい業務を覚えることや、日々の業務をこなしていくことで精いっぱいになってしまいます。応募の前に任期後にどんな仕事につくのか、どんな暮らしをしていたいのか、そのために任期中にやっておきたいことは何か(住居探しや次のステップのためのスキルアップ、仕事のネタ探し)など、計画をきちんと立てておきましょう。
アクティブレンジャーは田舎で自然系の仕事をしてみたい人にとって、なかなかいい仕事だね!
国立公園エリアで移住を検討している人は、ぜひチェックしてみてね!