仕事のタネ

地方の課題をみんなで動かす方法〜産学官の連携の作り方

あ、また希少植物が 食べられてる!

ここ最近、里山ではシカが急激に増えていて

シカの食害によって 里山の希少植物が絶めつの危機に。

特に私が住んでいる阿蘇くじゅう国立公園は日本一広大な草原が広がっており

草原性の希少植物がたくさんあります。

でも人もお金もノウハウもない、そんな時はどうしたら良いのでしょうか。

「産学官」の連けいの意味は

一口にシカ対策 といってもいろいろ。

大きくは シカを捕かくする方法と シカが入らないようにする方法の2つがあります。

地域課題を解決するためには、すべてにおいて 財源・マンパワー・ノウハウが 必要です。

こと地方においては 財源やマンパワーが 限られていることが多いです。

そこでカギになるのが 「産学官」の連けいです

産業界は経済的な支援や 事業ノウハウを活かして。

教育界は学術的な観点から 専門的なアドバイスを。

行政は事業実施の 実質的な責任を。

しかし行政側も産学官連携が必要だとわかりながらも

大手企業さんや 有名大学さんと 協定をむすぶだけで、

何もできないケースが 目につきます。

この1番の原因は 「現場の課題」が「地域ごと」に なっていないことが原因です。

ではどのようにしたら 現場の課題が 「地域ごと」として動き出すのでしょうか。

「現場の課題」を「地域ごと」にする方法

まずは事業実施主体となりうる行政に、どのように課題を運ぶかが 重要なポイントです。

なぜならば個人や小規模な企業で継続的に責任をかかえていくことは

現実的ではないからです。

(これは個人や企業では何もしないという意味ではなくて、事業の実施主体というおはなしです。事業への協力はいとわずに行います

こと里山の保全をはじめとする 自然保護の分野は 行政の中で大体はじっこ(涙)

地域課題というのは 変化の前と後を調査で記録することで

初めて客観的に感じることができます。

現場の目から見て 調査の目的は 大きく2つあると 感じています。

人を動かすための調査の方法とは

1つ目は その地域の現時点の情報を 正しく記録に残す という意味の調査。

もう1つは 関係者や行政機関と 課題を共有するための調査。

前者は専門的な知識が必要なこともあるので、今回は後者の調査方法について。

今里山で起きている シカによる希少植物の 食い荒らしについて。

毎日見ている場所であれば 変化に気がつくのですが、

第三者に説明するには 客観的なデータが必要です。

データといっても 難しいものではなく

今はみんなが持ってる スマホ写真でOKです。

特に同じ場所を 定期的に記録に とったものであれば言うことなしです!

今はGPS機能も付いてますから、 GPSの位置情報をうめ込んだ 写真データを定期的にとりこみましょう。

それをGoogleマップなどに GIS情報として 落とし込みます。

GIS、頭が痛い…なんて言わないでください。

要は写真と地図データが一緒に表示できればいいということです。

理由は状況が地図がリンクしないと 課題が立体的に見えないからです。

そして変化前と 変化後の写真をならべて比較できるようにしましょう。

でも それをたずさえて すぐに行政にGO!では うまくいきません。。。

なぜなら行政機関は 法律に基づいて 動く性質があるからです。

行政を動かすためのひと工夫は関係法規と事前の調整にあった!

そこで関係法規を かたっぱしから 調べます

シカによる希少植物の 食い荒らしであれば 希少野生動植物に関する県条例や国立公園に関係する法規。

その中に 行政機関の保護義務の規定を 発見しました。

「なぜ行政が動く必要があるのか」を関係する法規に基づいて説明できるようにしましょう。

また守りたいものが 大切だといっても

その土地の所有者の協力がなければ 物事はぜったいに動きません。

そこで行政に行く前に 土地所有者に対して

現状説明と対策をとることに なった場合の(想定でOK) 協力の確約をとることです!

(ここまでやって 初めて行政は動けるようになります)

このように 調査→法規→利害関係者の調整 を仕上げた上で、 行政機関にものごとを運ぶ。

ここがポイントです。 そしてここに学術機関の力が 入ると最強なんです!

大学との連携の作り方

やらなくていいことや世の中で繰り返されてきた失敗事例を

みずから繰り返す必要なんてこれっぽっちもありません。

研究機関には ある特定の分野の「知」が集まっています。

ではどうやってそれを利用するか。

実はこれが1番むずかしい。

キーワードは 「ハブ」になる人や機関の存在です。

大学の教授や研究者は 自身の研究課題を 調査できるフィールドをよくさがしています。

その調査費用については 期間限定の国から出る科学研究費を利用していることが多く

数年単位で テーマを変えることが 多いようです。

そこでカギになるのは 地域との間で 「ハブ」になる 人や機関の存在です。

たとえば国立公園であれば、ビジターセンターなどのエコミュージアムを拠点に情報収集をおこなう大学の教授や研究者がたくさんいます。

私が今まで地域にご縁があった学者さんは

・土木工学を活かした登山道の整備

・地域協働による自然保護

・草原性植物と昆虫の生態学

・観光統計学を基礎にしたオーバーユース対策

・特定外来生物に指定されている植物の駆除方法 など

本当にいろいろなテーマでしょ。

もちろんうまくいくこと ばかりではありませんが…

地域課題と 研究者の研究テーマが 最初から合致しているケースは 多くありません。

そこで必要になるのは 地域課題と研究テーマの マッチングです。

学者のテーマと地域課題と場所・人をつなぐ

マッチングというのは 実際に 「課題・場所・人とつないであげる」 ということです。

つないであげる人が たくさんいる地域では、 たくさんの研究者が多様な知恵をさずけてくれています。

つなぐと言ってもあなたが全てを実行するのではなく、ハブになってあげて いろんな場所や人を紹介してあげるだけです。

「あそこに行けば こんなフィールドがあって こんな調査ができるかもしれません。」

「あの人の話を聞けば いいアイデアが出るかもしれません。」みたいに。

その時に、地域課題とその研究者がそれに対して できそうなことを必ず伝えましょう。

なぜなら研究者の方も 世の中の課題解決につなげたいと考えてくださっている方がたくさんいるからです。(そうでない方も中にはいらっしゃいますが)

そうしているうちに 地域課題と研究テーマの すり合わせができます。

そしてつなぐ相手に 「行政」を入れることで 地域課題解決のための行政予算をひき出すことができることがあります。

またすぐに調査研究につながらなくても、 分野が共通すれば地域課題に対して専門家として意見を求めることができます。

専門家の意見は行政に対してはとても効き目があり、 それが地域ごととして動き出すきっかけになることもあります。

私の地域では シカの食害による 希少植物の絶滅の危機が しんこくでした。

これがとある大学教授のご意見を いただいたことがきっかけで大学と行政と一緒になって 対策にとりくむことになりました!

調査と対策費用については 行政から引き出すことができなかったので

民間団体である私たちエコミュージアムが負担することに。

実施責任は 行政に持ってもらうことで 決着しました。

あなたの地域に 外部機関との間で 「ハブ」になる人や機関がありますか?

ここに書いたことが 何かのヒントになって

皆さんの地域課題が 産学官連けいで動き出すことを 願っています!