仕事のタネ

正論だけじゃ動かない。シカに食われた花を守るために僕が学んだ「行政と大学」の動かし方

「あ、また貴重な植物がシカに食べられている!」

ただ『守りたい』と叫ぶだけでは、

何も変わりませんでした。

行政に言っても『予算がない』と言われ、

一人で山を歩いても限界がある。

悔しくて、情けなくて、

それでも諦めたくなくて。

そんな僕たちが

泥臭くあがいて見つけたのが

この『産学官連携』という武器でした。

僕が住んでいる

大分県九重町では

ここ最近、

シカがものすごい勢いで増えていて

シカの食害で

里山の希少植物が絶めつの危機に。

林業でも大きな被害が出ています。

でもあきらめたくない。

そんなときに

僕たちが使った大きな武器が

産学官の連携でした。

この記事では17年間自然保護活動に

携わってきた僕が

シカ対策をどうみんなで

動かしていったのか記憶を頼りに

書いています。

なぜ地方の課題は「産学官連携」なしでは解決できないのか

財源もマンパワーも足りない現場で見つけた「唯一の武器」

たとえば

一口にシカ対策 といっても

いろいろ。

シカを捕かくして数を減らす方法と

シカが入らないようにする方法の2つがあります。

地方の課題を解決するためには、

すべてにおいて

財源・マンパワー・ノウハウが 必要です。

こと僕が住んでいる

人口1万人にも満たない

小さな町であれば

財源やマンパワーが

どうしても限られていることが多いです。

そこでカギになるのが

「産学官」の連けいです

「地域ごと」にならない課題は、誰の心も動かさない

産業界は経済的な支援や

事業ノウハウを活かして。

教育界は学術的な観点から

専門的なアドバイスを。

行政は事業実施の

実質的な責任を。

民間はそれを支える

現場の作業を。

でもみんな

産学官連携が

必要だとわかりながらも

大手企業さんや 有名大学さんと

協定をむすぶだけで、

何も動けない、

そんなケースが多いですよね。

この1番の原因は

「現場の課題」が「地域ごと」に

なっていないことじゃないかと

思います。

ではどのようにしたら

現場の課題が「地域ごと」として

みんなの関心を集めて

動き出すのでしょうか。

人を動かす「調査」のコツ:客観的なデータはスマホ写真でいい

僕を救ってくれたキスゲが消えた。僕の「違和感」を「証拠」に変えるまで

地域課題というのは

変化の前と後を調査で記録することで

初めて客観的に感じることができます。

現場の目から見て

調査の目的は 大きく2つあると 感じています。

1つ目は

その地域の現時点の情報を

正しく記録に残す という意味の調査。

もう1つは

関係者や行政機関と

課題を共有するための調査。

今里山で起きている

シカによる希少植物の被害については

毎日見ている場所であれば 変化に気がつくのですが、

第三者に説明するには 客観的なデータが必要です。

僕がシカ問題に気づいたのは

地元の怒号うずまく地元の開発説明会の

帰りに見て癒してくれた

凛とした立ち姿のキスゲたちが

いつの間にか「あれ?今年は咲いてない??

何かがおかしい??」と

思うようになったのが

きっかけです。

観光業は日本の自然と地方を本当に救うのか?〜17年間の自然保護を卒業し、僕が九重版DMOに人生を賭けた理由〜 観光業は、自然と地方を救うのか。 国立公園の自然保護に 17年ささげてきた僕が、 いま、観光という 新しい...

でもそれがいつから

どんなふうにいなくなったのか、

誰かにきちんと

説明することができませんでした。

でも、あの時の写真があったんです。

そう、写真こそが客観的なデータとして

使えるものでした。

スマホ写真です。

GISや地図で見せる、課題を立体的に伝えるための工夫

平成24年の時は

こんなに咲いているのに、

平成27年になると減って

令和2年には全然写らなくなっている!?

特に同じ場所を

定期的に記録に

とったものであれば言うことないですが、

そこまで意識的にできていたとは

言えない状況でした。

ただ今はスマホカメラに

GPS機能も付いてますから、

GPSの位置情報をうめ込んだ

写真データがあったら

もっと具体的に説明することができます。

それをGoogleマップなどに

GIS情報として落とし込みます。

GIS、頭が痛い…なんて言わないでください。

写真と地図データが

一緒に表示できたら

「あ、ほんとだね。

ここでこんなことが起こってるんだね!」と

初めて共感してもらえます。

地図と写真が一体になることで

課題が立体的に見えるようになるんですね!

そして変化前と変化後の写真を

ならべて比較してみましょう。

すると

「あ、この間にこんなにひどくなったんだ」

と課題が抱えていた

時間が見えるようになります!

でも それをたずさえて

みんなの関心を得るため

行政へ行ってみても

なかなか門が開かないのが

現状です。

なぜなら行政機関は

法律」に基づいて

うごいているからです。

「ほ〜りつ??」

行政を動かすプロンプト:関係法規と「事前調整」の泥臭い舞台裏

司法試験に挫折した僕が、法律を「何かを守るための片道切符」と知るまで

現場の課題を

行政のことばである

「法律」に変換する必要があります。

僕は司法試験に挫折して

さまよってここに辿り着いた

過去があったので、

法律の読み方や調べ方は

抵抗なくできます。

僕の過去はこちら↓↓

どこに住むかより誰と暮らすか〜大分県九重町のサステナブルな暮らし方〜 私は18年前に神奈川県から 九州のおへそ部分 阿蘇くじゅう国立公園がある 大分県九重町に移住しました。 ...

仲間と見つけたガッツポーズ。行政の「保護義務」を根拠にする

仲間と一緒に

シカの食害から守れるような

法律の規定を探しました。

あれでもない、これでもない。

そして…

調べてくれていた仲間が

ついに発見しました!

希少野生動植物に関する県条例や

国立公園に関係する法規

行政機関の保護義務の規定が

あるじゃないですか!!

「やった〜!!!あった〜!!!!

これを根拠に

突破できるかもしれない!!」

小さくガッツポーズをして

調べてくれた仲間と喜びあったのを

今でも覚えています。

今までは

冷たくて無機質な法律の世界なんかで

生きていきたくない、と

思っていました。

でも法律は何かを守るための

片道切符なんだ!

そう感じるようになると

「今までやってきたことは

無駄じゃなかったんだ」と

少しだけ自分を肯定できるような

気持ちになりました。

幸いなことに

今はAIが必要な情報を教えてくれます。

「あなたは行政と協働のプロです。

今私は●●という課題を抱えています。

この課題を解決するために、

行政の協力を引き出したいと

考えています。

関係する法律を

全て教えてください」

とプロンプトを入れてみましょう!

またいくらその課題解決が

大切だといっても

土地の所有者の協力がなければ

物事はぜったいに動きません。

ことにシカ対策においては。

そこで行政に行く前に

土地所有者に対して

対策をとることになった想定で

協力の確約をとれたらベストです。

このように

調査→法律→利害関係者の調整

を仕上げた上で、

行政機関にものごとを運ぶ。

その時にあとおしとして

研究機関である

学術機関の力が入ると最強なんです!

苦情やクレームではなく正しく行政を動かす方法
苦情やクレームではなく正しく行政を動かす方法 田舎に移住すると、都会暮らしではあまり関わることがなかった行政、中でも市町村と関わる機会が増えます。 タネヨメ ...

大学との連携は「おせっかい」から。研究者の知恵を現場に繋ぐ方法

難しいコーディネートはいらない。ハブになるのは「地域を思う情熱」

やらなくていいことや

世の中で繰り返されてきた失敗事例を

自分たちで繰り返す必要なんて

これっぽっちもありません。

大学などの研究機関には

ある特定の分野の

「知」が集まっています。

ではどうやってそれを利用するか。

実はこれが1番むずかしい。

キーワードは 「つなげる人」です。

大学の教授や研究者は

自身の研究課題を

調査できるフィールドを

よくさがしています。

その調査費用については

期間限定の国から出る

科学研究費を利用していることが多く

数年単位でテーマを変えることが

多いようです。

たとえば国立公園であれば、

ビジターセンターなどの

エコミュージアムを拠点に

情報収集をおこなう

大学の教授や研究者がたくさんいます。

実際に大分県九重町の

長者原ビジターセンターで

今まで地域にご縁があった学者さんは

・土木工学を活かした登山道の整備

→大分大学が赤川登山道の整備を実施

・地域協働による自然保護

→アジア太平洋大学の先生が

ボランティアの協力制度の研究

・タデ原湿原の植生

→北九州大学の先生が

植生の調査

・草原性植物と昆虫の生態学

→信州大学の先生が

タデ原の草原の植物と昆虫を研究

・観光統計学を基礎にした

オーバーユース対策

→アジア太平洋大学の先生が

くじゅう連山の繁忙期のシャトルバスの

効果について検証

・特定外来生物に指定されている

植物の駆除方法

→東京都立大の先生がレクチャー

本当にいろいろなテーマがありました。

もちろんうまくいくこと

ばかりではありませんが…

地域課題と研究者の研究テーマが

最初から合致しているケースは

残念ながら多くありません。

そこで必要になるのは

地域課題と研究テーマの

マッチングです。

学者のテーマと地域課題と場所・人を情熱でつなぐ

マッチングというのは

実際に

「課題・場所・人とつなぐ」 ということです。

つなぐ人がたくさんいる地域では、

たくさんの研究者が

たくさんの知恵をさずけてくれています。

東京でいろんな仕組みや

最新の技術が生まれていくのは、

まさにこの総量が多いからでしょう。

つなぐと言っても

自分一人でつなぐのではなく、

いろんな場所や人を紹介する

おせっかいをするということです。

「あそこに行けばこんなフィールドがあって

こんな調査ができるかもしれません。」

「あの人の話を聞けば

いいアイデアが出るかもしれません。」みたいに。

その時に、

その先生ができそうなことと

地域課題に対してできそうなことを

伝えてあげましょう。

なぜなら研究者の方も

世の中の課題解決につなげたいと

考えてくださっている方が

たくさんいるからです。

そして大切なのは「思い」です。

僕もある大学の先生とこんな話になりました。

僕「今貴重な草原の植物たちが

どんどんシカに食べられている。

環境省はすぐに手を出せないし

どうしたらいいですか?」

先生「う〜ん。実はシカの食害は

専門ではない。でも植生調査は専門だから

食べられた確率などを出すことは

できるかもしれない。」

僕「でもなんとかすることなんて

お金のない僕たちにできるんですか?」

先生「今大切なのは全部を守ることではなくて

核心部分だけでもいいから守ることだよ。」

僕「そうですか!でもどこが草原の核心部分ですか?」

先生「ここじゃないかな。

私も研究テーマをこちらでできるよう

頑張ってみます!」

僕がやったのは

難しいコーディネートではありません。

大学の先生に

『ここには、こんなに珍しい花があったんです!

でもどうしたら良いかわからないんです!」

と正直に熱く語る

そんな『ただのお節介』だったんです。

そうしているうちに

地域課題と研究テーマの

すり合わせができます。

そしてつなぐ相手に

「行政」を入れることで

地域課題解決のための

行政予算をひき出すことが

できることがあります。

今回は大学の先生の力を借りて

一緒に協議に入ってもらって

土地所有者の

環境省さんと一緒に考えました。

「正直、お金を出すのは怖かった」僕が民間負担で決断した理由

環境省さんとは

幾度にもわたり

話し合いを続けましたが

残念ながら予算は引き出せず

シカ対策のための柵の購入の

費用は僕ら民間側で持つことになりました。

正直、自分たちで

お金を出すのは怖かったし

自分たちの土地でもないのに

なんで土地所有者の行政が

お金を出してくれないんだという

思いもありました。

でも、『実施責任は行政に持ってもらう』

という一歩を勝ち取るためには、

これが必要だった。

あの時の決断が、

今の九重を守る

大きな一歩になったと確信しています。

もしマッチングがうまくいかなくて

大学の先生たちにとって

すぐに調査研究につながらなくても、

地域課題に対して

専門家として意見を求めることができます。

専門家の意見は

地元の人、行政の人にとってはとても効果があり

それが地域ごととして

動き出すきっかけになることもあります。

まとめ:みんなの「おせっかい」が、地方の未来を救う宝物になる

単にその場所を紹介したり

つなぐことができる

おせっかいができる人が

たくさんいることが、

実は地方の課題をみんなで動かす

きっかけになります。

きっと地域には

あのおじさんしか知らない場所がある。

あのおばさんしか知らない人がいる。

あの人しか気づいていないことがある。

そう思うと宝物は

地域に眠っているんじゃないでしょうか。

地域を外の世界とつないでいくのは

地域を思う誰かのおせっかい

人口1万人以下のの小さな町でも

みんなのおせっかいの総量が上がれば

地方の課題が動き出すかもしれません!

「行政と対等に渡り合うためには、

法規だけでなく

『自分たちの活動にはこれだけの価値があるんだ』

という誇りも必要です。

僕たちが活動を

『お金というラブレター』に換算して伝えた、

もうひとつの物語もぜひ読んでみてください。

「一銭にもならない」活動を誇りに。自然保護の価値をお金というラブレターで伝える 「こんな活動、 一銭にもなりゃしないよ。」 里山や自然保護活動で よく聞こえてくるコトバです。 お...

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