地域のタネ

自然保護活動を持続可能にするために〜価値をお金で明らかにする〜

「こんな活動、 一銭にもなりゃしないよ。」

里山や自然保護活動で よく聞こえてくるコトバです。

でも本当に一銭にもならないの?

もしかしたらみんなに正しく伝わってないだけじゃない?

というわけでこの記事では当地域でどのように伝えることで

地域の皆さんや行政の協働を加速することができたのか

解説したいと思います。

なぜ自然保護活動の価値をお金で明らかにする必要があるのか

                                                                         人口減少の現代。

たくさんのボランティア活動によって、

地域の里山や自然が守られています。

でも本当にその価値を明らかにしているところは少ないです。

「この地域は本当に自然が美しいところですね」

と言われても

それが自然保護活動の直接的な人的・物的支援には

つながりません。

逆にその価値が認められて観光利用が進み

山・川・海が荒れれば荒れるほど

「自分達はいったい何のために活動しているのだろう?」と

疑問が生じてきます。

一方で

「なんでもかんでもお金じゃない。

崇高な理想のもとにやってるんだ。」という

素晴らしい人たちもいらっしゃいます。

自分の時間とお金を社会のために使ってくださり、

私もいつも本当に頭が下がる思いです。

しかしその人たちの後を継ぐ人たちは

果たして現れるのでしょうか。

人口減少の時代。

過去の日本の経済の繁栄はどこへやら。

先進国から転落が始まり、

少子高齢化、インフレ、物価高の悪循環で

ますます生活はきびしくなっています。

そんな中、自分の余暇を使ってボランティアをしようと思う若者が

過去の高度経済成長時代の若者の数と比べて

どのくらいいるのでしょうか。

結局のところ

私たちの暮らしも自然保護活動も

資本主義社会の中にあることから

「お金」の問題からはのがれることができません。

ましてや自然保護のためのお金は

公的な税金だったり

善意の形である寄付金が利用されることから

活動の価値をお金であらわす必要があります。

そしてその基準は透明かつ客観的な基準であることが必要です。

CVM(仮想的市場評価法)は一般的な価値算出方法

よくあるのが、

自然を守るために

いくら払っても良いか人々にたずねて

その結果をもとに 自然の価値を評価する方法です

これはいわゆる

「CVM(仮想的市場評価法)」と呼ばれており、

確かに今までなかった自然の価値をはかるのに

画期的な方法です。

この方法を利用して国立公園の自然の価値を

明らかにしようとした論文が面白いので

よかったらご覧ください↓↓

「国立公園阿蘇地域における来訪者の観光行動と環境保全への支払意思額の関係」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ceispapers/ceis35/0/ceis35_221/_pdf/-char/ja

でもこの結果を見ていて もやもやするのは

「他者」が基準であることです。

観光客の支払意思額は「806円」と聞いても

「おおありがたい!」なのか 「う〜ん806円だけ?」と思うのか。

現場で作業する人たちは

これを見て自分ごとと思えないんですね。

この方法はどちらかというと

寄付を募りたい人が

どういった層に

どのくらいの金額を

どこで求めることができるかという

寄付募集の基準になるかと思います。

でもこれは

その自然を利用している人たちに

自然の価値を伝えるのには不十分です。

また現場で作業している人たちを

勇気づけたり

本当に活動に必要な資金を

行政や支援者から引き出すことは

できません。

それでは支援を引き出すための

価値の算出方法にはいったいどんなものがあるのでしょうか。

現場の自然保護活動の活動費を公共工事設計単価で積算する

そこで私たちは

行政と協力をして

実際に地域で行われている

ボランティア活動の活動費を

都道府県の公共工事設計単価を利用して積算しました。

普通作業員の単価を利用、時間と人数をかけて人日として算出

例:普通作業員単価:19,000円/日(8時間)

作業にかかった時間が2時間、人数が10人なら

0.25時間×10人=2.5人日

19,000円×2.5人日=47,500円

するとわが地域での自然保護活動。

実は毎年2,000万円以上の費用が

かかっていることがわかりました。

(但し活動支援費として

行政に拠出していただいているお金は

10分の1にも満たない…ここはこれから!)

これを見て活気づいたのは

なんと現場のボランティアの人たち。

「自分達がやってきたのは、 こんなに価値があったんだ!」

その気づきが 明日のボランティア活動の活力に。

行政もこの結果を見てびっくり。

全部この作業が委託になったら、

行政がお金を出して守ることなんてとうていできない。

だから行政も民間もみんなで

このボランティア活動が永続的に続くように

資金的、人員的な支援を惜しまずやろうとなりました。

お金がなくたって「知恵」をふりしぼって

行政と民間が「協働」すれば

小さい予算でも大きな効果を生むことができます。

地方の課題をみんなで動かす方法↓

地方の課題をみんなで動かす方法〜産学官の連携の作り方 あ、また希少植物が 食べられてる! ここ最近、里山ではシカが急激に増えていて シカの食害によって 里山の希少植物が絶めつの...

私たちの地域では

この結果を利用して

利用と保護が同時に進むような

エコツーリズムや寄付金付きツアーの催行

進めています。

自然保護活動の価値は見えにくいけれども

みんなの共通言語である

「お金」を通して見つめると

広くその価値を伝えることができます。

ということで私が勤めていたエコミュージアムでも

ボランティア団体と行政の間の中間支援組織として

地域の自然ほごのためのファンド作りに取り組んでいます。

あなたの地域の里山や自然保護活動も

きっとすごく価値のあることです!

ぜひ地域みんなで やっていることを 可視化しませんか?